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小樽  

南方熊楠顕彰館の2階、交流・閲覧室に木箱の蓋があります。
門弟小畔四郎から送られた木箱の蓋。
そこには小樽市の住所が。
というわけで、顕彰会役員、会員、事務局計4名で小樽に行ってきました。
100%自費です。
当然、小樽だけが目的ではありませんが、関係ないので割愛しまーす。


南方植物研究所設立の資金集めのため、熊楠は1922年(大正11)3月、56歳のとき36年ぶりに上京し、8月まで5ヵ月程滞在しました。
研究所の発起人には、原敬、大隈重信、徳川頼倫、幸田露伴ら、有名人約30名が名をつらねています。
募金目標は当時としてはかなり高額で、この基金で、採集した標本の整理や図録の刊行をおこない、今後の研究の充実を図ろうとしました。

さて、この募金活動には、小畔も奔走しています。
現在刊行中の『南方熊楠・小畔四郎往復書簡(三) [大正十一年~大正十二年]』には、そのやり取りがくわしく載っています。
小畔は、東京銀座にあった高田屋旅館に熊楠を何度も訪ねたようです。
熊楠が東京滞在中に小畔は小樽に転勤になりますが、直接その件についての記述はありません。

小畔→熊楠(T11.4.6)
小樽行き汽車中より
昨夜は遅くまで御邪魔仕り失礼仕候。
(中略)北海道の植物精々心懸可申候。(後略)

熊楠→小畔(T11.5.27)
日本郵船会社小樽支店長 小畔四郎様
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【旧日本郵船株式会社小樽支店】
明治37年着工、同39年10月に落成。
昭和30年市が日本郵船から譲り受け、翌31年から小樽市博物館として再利用されて来ましたが、44年3月には、明治後期の代表的石造建築として国の重要文化財に指定されました。
老朽化が目立って来たため、59年10月修復工事を着工、33カ月の工期を経て62年6月竣工。


小畔→熊楠(T11.6.6)
貴状旅行中函館にて拝受。釧路、根室を経て只今網走着。明日稚内に向、十日頃小樽着の筈。之れにて北海道各地を1週(周)することとなる。但し植物方面は得る処無し。今梅と桜の花盛り、麦の芽漸く出たり。

小畔→熊楠(T11.6.24)
只今北海道特産にして採集を禁じられ居るマリ藻(玉藻?)と言ふもの及一種見慣ぬもの、孰れも淡水藻、生きて居る故生かして御送り申度と存候。

熊楠→小畔(T11.6.28)
マリ藻(阿寒湖の)は小生標品所持致居候故、送らるるに不及候。一種見なれぬ藻とある方は、試みに当宿迄送り被下度候。


小畔は北海道で採取した植物、粘菌のみならず、いろいろな植物を熊楠に送っています。
マリモはいらなかったようですね。

小畔→熊楠(T11.8.24封書附 募金目録)

南方熊楠様
南方研究所基金
当地にて募集の基金左の通り金五拾円御送金申上げ候間、何卒貴名自書の受領書小生宛(又は直接)御送り被下度候。
小樽 第一銀行 支配人 永井啓
同  三井銀行 同 渡辺省二
同  三井物産会社支店長 守岡多仲
同  北海道拓殖銀行支店長 永井徳太郎
同  北日本汽船会社取締役 田辺貞造
                      各十円づつ
合計 五十円也
                               以上
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旧第一銀行小樽支店
建築年 大正13(1924)年
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旧三井銀行小樽支店
建築年 昭和2(1927)年10月
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旧三井物産小樽支店
建築年 昭和12(1937)年
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旧北海道拓殖銀行小樽支店
建築年 大正12(1923)年

う~ん。そのときの建物ではないな~。
旧北海道拓殖銀行小樽支店だけは、小畔がみている可能性大。
北日本汽船会社についてはインターネットに資料無し。

小畔→熊楠(T11.11.7)
本日当地「日本銀行支店長志賀虎一郎氏」より研究所へ金五十円寄送、(中略)同氏は先きに当地各会社支店長連にて各十円づつ出金承諾せられし折に大に奮発せられ、(後略)
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日本銀行旧小樽支店
建築年 明治45(1912)年7月

最後に 旧日本郵船(株)支店長社宅。
そうです小畔が住んでいた家です。
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建築年は明治末期なので、小畔が住んでいた家になります。
詳細な地図がなく、三回道を聞いてやっと見つけました。
現在も人が住んでいます。

大正12年4月、日本郵船株式会社の近海・内航部門を分離して、近海郵船株式会社 が設立され、小畔はそこの小樽支店長となります。そして、10月に東京に転任するという矢先、関東大震災が発生します。小畔一家は小樽に居たため全員無事でした。

簡単にゆかりの地小樽を紹介してきました。
自宅でアップしたため、細かな資料が手元にありません。
あしからずご了承ください。

詳細は『南方熊楠・小畔四郎往復書簡(三) [大正十一年~大正十二年]』をご覧下さい。小畔がどこで植物採集をしたかも載っています。

そういや、ちょうど同じ時期に熊楠は日光に行っています。
日光調査Part2、まだ紹介してませんでした。
おいおい紹介します。


【くまちゃん】

by kumagusu-m | 2011-05-28 01:20 | ゆかりの地

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